■南八甲田登山路問題。      :平成13年10月31日

オーバーユースが問題となっている北八甲田に較べ、ごく限られた入山者を受け入れるに過ぎない南八甲田が、新聞紙面だけでなくラジオでも話題になっている。
誤解を恐れずに問題を要約すれば、一登山愛好家の「善意の刈り払い」は、どこまでゆるされるか・・・・であろう。はたしてその実態は、どうなのか。この秋二度訪れた現状と、関連新聞記事を紹介して、 広くみなさんの意見を募る所以である。

11/02  追記:東奥日報掲載記事二件
11/08  「読者の声」の掲載。
11/16  追記:東奥日報掲載記事一件

●南八甲田登山路とは?

南八甲田は、櫛ヶ峰を主峰とし十和田・八幡平国立公園の中でも、 最も自然が色濃く残っている山群である。
昭和8〜9年度に自動車道として開鑿設されたルートで、現在は かなりの区間が自然に回帰した状態となっているが、これを旧道と 呼んで利用しており、その猿倉温泉〜御鼻部山の区間距離は24.15キロメートル、所要時間8時間、高低差500メートルである。
メインルートの猿倉温泉〜櫛ヶ峰は直線距離6.2 キロメートル(標高差663メートル)であるが車道規格で緩斜区間が多く、道歩行距離はその約2倍の11キロメートルである。
ルートの平均海抜高が1200メートルとブナ帯の限界を越え、アオモリトドマツの濃い高原状の地形で、湖沼と広大な湿原が展開する。

次の図書が広い行程に亘り踏破した本人が執筆しておりお勧めできる。
南八甲田山に遊ぶの記 上・下/小笠原松次郎 東京:風景協会 ; 1927
南八甲田の自然(T、U、V、完)三浦文吉 青森林友 1965

   (鳥瞰図  南八甲田地図   乗鞍岳コース図  参照)

●南八甲田登山路の現状。

○ガイドブック・案内図。
既刊の印刷物は枚挙に遑(いとま)がない。現在最も普及しているのは、「南八甲田自然観察マップ 2000.4.」 監修:環境庁東北地区自然保護事務所、発行:八甲田地区パークボランテイア連絡協議会、であろうか。笹密生、ヌカルミ、洗掘など標記されている。

○登山路の現状。
全般的には、健脚向きの旧道を利用した自然歩道が確保されていると思う。
しかし、長年の植物遷移と洗掘が進んで極めて歩行困難な箇所が随所に認められ、雨天時には洗掘のため歩行不可能な区間も数カ所だがみられた。
昨年来一部の箇所(特に乗鞍岳→赤沼)で刈り払いが行われ以前に比べ歩行が容易となって、感謝していたのは事実である。

●新聞掲載記事。

次に関連記事を発行日順に掲載する。現地を踏査していない読者に、誤解を与えると思われる箇所については、若干のコメントを加えた。

○ 010914 Web東奥           
南八甲田で自然林の一部無断伐採
○ 010922 東奥日報(投稿) 理解してほしい登山道の手入れ
○ 010923 東奥日報(投稿) 登山ブームと失われた自然
○ 010926 東奥日報     管理の在り方に一石
○ 011004 東奥日報(投稿) 南八甲田登山道刈り払いは疑問
○ 011011 東奥日報(投稿) 無断刈り払いはやはり違反行為
○ 011018 デリー東北    南八甲田の湿原ピンチ
○ 011018 読売新聞     無許可登山で消滅危機
○ 011021 東奥日報     ロープ伝うと迷子に?
○ 011031 東奥日報(投稿) 南八甲田の自然を守ろう
○ 011102 東奥日報           東奥春秋「自然エゴ」
○ 011031 東奥日報(投稿) 豊かな自然と共生する知恵を

○上記新聞記事を読んで感じたこと。
1) 18日〜21日の三社の記事は、奇しくも申し合わせたように、広い南八甲田の中から同一の箇所を取り上げていること。しかもその内容は、三社とも新聞の「事実を正確に伝える使命」を見事に放棄していることである。

2) 問題の湿原につづく間道は、ボランティア氏によって新設されたとも受け取れる報道となっているが、実際は既にガイドブックでも紹介され、広く利用されていたものである。詳しくは次を参照されたい。

湿原につづく間道は新設か?


3) 東奥日報「明鏡欄」への投稿が五通あったが、四通(8割)が刈り払い反対意見であった点である。 反対意見が多かったといえばそれだけのことだが、不正確な状況報道の中で「ある意志を持って書かれた文章がそのまま掲載されることの危険」を強く感じた。

4) 今回の読者の意見を募る企画は、「一登山愛好者の登山路刈り払い」もさることながら、新聞の使命である「報道の客観性」に問題有りと強く感じたからであった。

●現場写真。

次に問題となっている「付替路」と「既往路」の写真を次に掲載する。ここが付け替え路のスタート地点(海抜1010mピンカーブの北、望甲台まで600m)である。
○ 平成13年10月12日撮影 既往の登山路と付け替え登山路

●関係機関とうの考え・方針など。

直接、取材するのが望ましいのだが、既に公平無私と言われる新聞で公表されていることでもあり、ここでは煩雑を避け、既刊(東奥日報 010926)の記事を抄録するにとどめた。

○環境省東北地区自然保護事務所(関山和敏所長)。
「歩道は古くからみんなの力によって維持されてきた。われわれの管理方針を広く理解してもらった上で、自然保護の観点から手入れがどこまで許容できるかをみんなで考え、管理の方向を導き出したい。」

○三八上北森林管理署(中野渡均署長)。
「計画歩道について言えば、刈り払いは人員削減などで手が回らず、ボランテイアを希望する人にはお願いしたい状態だが、対応を検討するので、愛好家に作業を自粛してほしいと要請した」。

○登山愛好家刈り払いボランテイア氏。
「安全で歩きやすいように」。

○八甲田・十和田を愛する会代表久末正明氏。
「一部のエゴで刈り払いを認めれば、八甲田の二つの楽しみ方を実現してきたこれまでの努力が無になる」。(二つのとは、南八甲田・原始性、北八甲田・快適利用を指す)

●貴方は、どのように考えますか。

以上、拙い紹介に終始したが、賢明な読者諸氏はその問題の所在と、今後のあるべき姿を思い描かれた事と思う。 皆さんの率直なる感想・意見をお寄せください。
青森の自然を愛する貴方の高い見識に期待いたします。

寄せられた感想・意見は、11月10日(土)迄に、先の読者の声・研究発表の報道はこれでよいのか に準じて本欄に掲載する予定です。匿名を希望される場合はその旨お知らせください。
最後に南八甲田に関するささやかな願いを述べ読者の判断を仰ぐ次第です。

世界遺産白神山系では、入山規制以降、監視員による高額の有料ガイドが横行しているという。 南八甲田にあっては、歩道条件を事実上入山規制に等しい状況に置いて、一部プロの占有エリアとしてはならない。地元報道機関は『真実を公正敏速に報道し、 評論は進歩的精神を持してその中正を期し』てほしい。                          (文責:棟方啓爾)

■環境省東北地区自然保護事務所主催の意見交換会が11月18日(日)開催される事となった。
詳しくは南八甲田登山路:意見交換会をご覧下さい。(11/10 追記)


■    南八甲田登山路問題関連は、次の通り掲載しました。追記22日
読者の声 南八甲田登山路はこれでよいのか  :11月17日現在 18通。
報道された「湿原につづく間道」は新設か  :11月10日
提案 南八甲田登山路をどうするか   :平成13年11月16日
意見交換会に参加して  :11月19日:追記22日
個人の善意を大切に育てよう。南八甲田登山道問題の纏め。 11月22日